西尾維新『ニンギョウがニンギョウ』

ニンギョウがニンギョウ (講談社ノベルス)

ニンギョウがニンギョウ (講談社ノベルス)

 2005年9月購入。1年半の放置。西尾作品の特徴のひとつに「過剰性」というのがある。類似語・類義語を羅列することによって読者のイメージ喚起を促したり、あるいは執拗なまでに持論を延々と語る主人公、極端に記号化させた多くのキャラクターたち……その「過剰性」、本書においては23人という妹の数という形で明確に表出している。そして従来の西尾作品であるならばこの妹たちを個性化させることによってストーリーを展開させていくはずであろうが、本書に限ってはそのメソッドを適用しなかった。いわゆる「文学」っぽいパッケージを用いて刊行されたことをかんがみるに、舞城王太郎佐藤友哉といった「ファウスト系」というジャンルを「文学」方面へと展開させた先行者に倣ったことは明らかだ。従来のキャラクター小説路線から外れた「文学」っぽい作品を上梓したのは本人の挑戦なのか、あるいは編集者の走狗と化したのか一読者には判明しないが、作者の持ち味を活かす方向とは思えない。