瓊瑤『還珠姫』

還珠姫

還珠姫

 2005年10月購入。1年5ヶ月の放置。女盗賊の小燕子はひょんなきっかけで紫薇と知り合う。この紫薇という少女、実は乾隆帝落胤であり、母亡き後は父に一目会いたいと望んでいた。侠気を重んずる小燕子は紫薇に協力するのだが、思わぬ事件によって彼女自身が皇帝の娘であると認識され、還珠姫の地位に就くことになってしまう……

 少女たちの友情、父と娘の愛情といった健全極まりないテーマをこれでもかと前面に押し出した物語で、世界名作劇場中国版といった趣がある。お涙頂戴の皇帝と小燕子の会話シーン、あるいはこのテーマを際立たせるためにいかにも悪役ですよといわんばかりの王妃の存在など、演出はあざとすぎるきらいがあるものの、ツボをまったくはずしていないため十分に楽しめる。欲を言えば、皇帝に娘だと誤解された小燕子と紫薇の誤解による確執を書き込んでくれれば後のカタルシスももっと大きくなったと思う。ただし本書は抄訳であるのでそのあたりのテンポが悪くなりそうな部分を省略しているという可能性もある。