高田崇史『QED 神器封殺』

QED 神器封殺 (講談社ノベルス)

QED 神器封殺 (講談社ノベルス)

 2006年1月購入。1年2ヶ月の放置。このシリーズの基本形は現代における事件およびその解決と歴史的事象の独自解釈の二本立てで成立している。両者の結びつきが密接であればあるほど完成度は高くなり、逆にシンクロ率が低ければミステリ要素が面白かろうと歴史解釈がユニークであろうと、よほど突出していない限り作品そのものは散漫な印象を受けることになる。残念ながら本書は後者に属する出来であると思う。確かに袋とじにした歴史ネタはそれなりにインパクトはあるがあくまで一歴史ネタという事象にとどまり、現実を舞台にしたもうひとつの作品における軸――ミステリネタにはさほど関与してこない。一方、ミステリネタ単体で見た場合、これまたインパクトの強い癖のあるネタを用いているのだが、その後に描かれる歴史ネタへの結びつきは弱い。それぞれのネタ自体は結構面白いと思ったので残念だ。なお、キャラクターもののシリーズとしてみた場合、新キャラ登場で後の展開へ向けて楽しみな要素があり、むしろその部分が一番気になったりする。