2004年12月購入。2年3ヶ月の放置。
馳星周のデビュー作にして
出世作、『
不夜城』シリーズの完結編。このシリーズは劉健一を中心人物に据えて新宿の裏社会を描いた
ノワールで、前2作ではしがないチンピラに過ぎなかった健一が裏社会の大物立ちを相手に
虚虚実実の駆け引きを繰り広げ、徐々にのしがっていくという構成をとっていた。しかし完結編の本書での彼の立ち位置は視点人物からはずれ、代わりに李基――日本名・武基裕が前作における健一の役どころを担うこととなる。そもそも馳
ノワール*1の定型は、主人公=
黒社会での下っ端、あるいは
黒社会に染まりきっていない半端者が危険な大物を相手に一歩間違えば殺されてしまう綱渡りのような駆け引きを繰り返し、騙し騙され裏切り裏切られを繰り返し、結果悲劇的結末を迎える、あるいは悲劇的でありながらもそれなりの地位を手に入れる、というものだ。前作までにこの駆け引きの勝者になった劉健一は以降、この定型における弱者のポジションには立てず、逆に主人公たる弱者の敵というポジションに追いやられる。作者の手癖が垣間見れて興味深い。もちろん作品そのものも、物語の吸引力は強く、シリーズ完結編として読み応えのある出来となっている。