辻村深月『ぼくのメジャースプーン』
- 作者: 辻村深月
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/04/07
- メディア: 新書
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基本的に辻村作品のヒロインは「守られるべき存在」である。しかし先行作品がその「守られるべき存在」たる女性自身の視点に立っていたのだが、本書では逆に少女を守る少年の視点で物語が展開する。「守られるべき存在」ということはすなわちかよわい女性ということであり、その存在をダイレクトに描写することで生じるなよなよ感・いじいじ感といったものが鼻につくこともあったのだが、視点の変化によってそういったにおいは軽減されており、感情移入に関してはその点だけはスムーズになったといえる。しかし同じ感情移入という点でもマイナス面もある。主人公の「ぼく」の思考法が少年らしくなく、そういった年齢にそぐわないキャラクター設定の齟齬に違和感を覚えずにはいられず、いかにも作り物めいた人物造形だという冷めた見方をしてしまうところだ。とはいえ全体的によくまとまっており、主人公の能力を活かしたストーリー展開の仕方はうまく、なかなかの良作といえる。