芦辺拓『名探偵Z 不可能推理』

名探偵Z―不可能推理 (ハルキ・ノベルス)

名探偵Z―不可能推理 (ハルキ・ノベルス)

 2002年3月購入。5年の放置。本格ミステリというジャンルに極めて自覚的な作者が、そのジャンル自体を名探偵という存在を軸にパロディ化してみせた、いわば遊び心にあふれた1冊。芦辺のもうひとつの特徴でもある怪奇冒険嗜好も存分に発揮され、作者自身相当楽しんで書いたのではないかと想像させられる。もっとも、その趣向はともかく作者の文体が元来堅めであるためか、内容そのものとのギャップが著しく作品最大のウリであるはずの稚気を十分に楽しむには至れず。