浅田次郎『天切り松闇語り第三巻 初湯千両』

天切り松 闇がたり3 初湯千両 (集英社文庫)

天切り松 闇がたり3 初湯千両 (集英社文庫)

 2005年6月購入。1年8ヶ月の放置。基本コンセプトは「爺さんのお説教」で、若かりし頃は大泥棒「天切り松」の名をはせた松蔵が「近頃の若いやつはなっとらん」とばかりに自身とその仲間たちの昔語りを繰り広げる。かようなコンセプトである以上、説教くささが感じられるのは否めない。が、それを作者得意の人情話にしたてることによって巧みに中和させている。また、この人情話が昔語りの舞台となる大正期の描写にうまい事はまり込み、味わい深い作品群に仕上がっている。