柳広司『新世界』
- 作者: 柳広司
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2006/10/25
- メディア: 文庫
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あらすじから明らかな通り、本書は歴史ミステリなのだがその歴史のなかでも非常に重いテーマを扱った作品でだ。ミステリ的な仕掛けや解決はとりたてて目を引く箇所はないが、人間の尊厳やモラルといったテーマから生ずる部分はズシリと響く。
なお、原爆という大量殺戮兵器を造った天才たちがたった一人の人間のちっぽけな死に関わるという展開は、解説における有栖川有栖の言を用いるまでもなく、笠井潔の大量死理論を容易に想起させる。