石田衣良『娼年』

娼年 (集英社文庫)

娼年 (集英社文庫)

 2004年5月購入。2年8ヶ月の放置。大学生のリョウは何かに熱中する事もなく、退屈な大学生活を送っていた。しかしバーテンのバイトをしていたリョウの前に現れた女性・御堂静香によって彼の生活は一変する。彼女は会員制ボーイズクラブのオーナーで、リョウを「娼夫」としてスカウトしたのだ。
 冷め切って退屈した青春を送るリョウの姿は現代的若者の一典型としてベタに設定されている。そのリョウが「娼夫」の仕事で何かに目覚めるというわけでもなく、多様な性行為にのめりこむわけでもなく、ただただ与えられた境遇に身を任せる姿勢が徹底的に描かれるストーリーは空虚な印象を受ける。そしてそれが冷め切った若者像を描くことに終始した作者の意図によるものであることは容易に想像できる。物足りないととるか、オサレでスタイリッシュな石田らしい作品ととるか判断に迷うが、個人的には前者をとりたい。