森博嗣『τになるまで待って』

τになるまで待って (講談社ノベルス)

τになるまで待って (講談社ノベルス)

 2005年9月購入。1年4ヶ月の放置。赤柳紹介のバイトのため、超能力者という評判を持つ神居静哉の別荘「伽羅離館」を訪れた海月及介らC大学メンバーは、密室殺人事件に遭遇する――のだが、事件そのものが起きるのは物語の中盤以降でなおかつ解決自体もあっさりとなされてしまう。通常のミステリの見せ場であるところの事件(本書の場合は密室殺人という不可能性を有する)―解決というポイントには、作者の筆はほとんど費やされない。全編を通して語られるのはS&MシリーズやVシリーズを含めた登場人物たちの関係や言動で、その中心に浮かび上がってくるのは「天才」真賀田四季だ。おそらく作者の目的はこれまでのシリーズを巻き込んだ上でこの天才を描ききろうということではなかろうか。であるとするのなら、本シリーズが完結した暁にはこれまで発表されてきた四季がらみの作品をひっくるめた「真賀田四季サーガ」が完成する事になる。まだ途中までしか読んでないので見当違いの憶測を立てているだけかもしれないなんですけどね。