ジョン・ディクスン・カー『皇帝のかぎ煙草入れ』

皇帝のかぎ煙草入れ (創元推理文庫 118-11)

皇帝のかぎ煙草入れ (創元推理文庫 118-11)

 夫のネッドと別れバツ一となったイヴ・ニール。その後彼女は向かいの家に住むトビイと婚約する。ところが、トビイの父親が何者かに殺されてしまう。一部始終を目撃していたイヴだが、その時にはネッドが部屋に忍び込んできていたためにアリバイの申し立てができない。そのため彼女は殺人の容疑者にされてしまう……

 メインとなるトリックはシンプルなものがひとつだけ。現代的視点から見ると物足りないと感じる向きもあるかもしれないが、そのトリックを成立させるために作り上げたシチュエーションが丹念でよい。時代に即した雰囲気も抜群。なお、作中で重要な意味を持つ「かぎ煙草入れ」だが、これがどういったものであるかイメージできるかどうかで腑に落ちる具合も変わってくるので、未読の方はあらかじめどういった代物かリサーチしておいたほうが吉。