山口雅也『ステーションの奥の奥』

ステーションの奥の奥 (ミステリーランド)

ステーションの奥の奥 (ミステリーランド)

 2006年11月購入。2ヶ月の放置。将来の夢は吸血鬼になることだという少年・陽太は夏休みの自由研究に変わり行く東京駅を取り上げることにした。叔父の夜之介の協力を得て東京駅を探索する陽太だが、そこで死体を発見することとなる……

 田舎や郊外が舞台として設定されることの多いミステリーランド*1にあって、都会中の都会たる東京を取り上げている点で、異色作といえよう。その大都会を舞台に物語を展開させていくのに、作者は「吸血鬼」という材料を持ってきた。これまで一筋縄ではいかないミステリ作品をものしてきた作者がここでも一ひねり加えてきたのか、と思ったのだが、この期待は大きく裏切られた。本来のアヴァンギャルドな作風がこの叢書に合わない以上そういった従来の路線をとりにくいわけで、作者の持ち味がスポイルされてしまったのはしかたのないところ。また、そういったフィルタをはずしてみれば、そう悪い作品でもないだろう。

*1:「子供向け」を執筆するに当たって、作者の実体験・原体験が大きく影響しているのかもしれない