貫井徳郎『さよならの代わりに』

さよならの代わりに

さよならの代わりに

 2004年3月購入。1年9ヶ月の放置。劇団員の和希は未来からやってきたという少女・祐里と出会う。彼女の頼みで公演中の先輩女優の楽屋を見張ることとなるのだが、少し目を離した隙に先輩女優は殺されてしまう。犯人は誰なのか、そして祐里は本当に未来からやってきたのか……

 ハードカバー・初版本の帯には長谷川京子の推薦文が。どの層にターゲットを絞ったのか一目瞭然の切ない系のラブ・ストーリーとして作品は仕上がっている。小劇団を舞台とした青臭い空気、お人よしの主人公や魅力的な少女等さまざまな登場人物、そして作者本来のフィールドであるミステリ的構成――こういった要素がタイムスリップもののSFという土台の上に巧く乗っかっている。重苦しい雰囲気のミステリ作品を主に筆を執ってきた作者にとって作風の幅を広げるという意味において価値のある作品といえよう。