キム・ニューマン『ドラキュラ崩御』

ドラキュラ崩御 (創元推理文庫)

ドラキュラ崩御 (創元推理文庫)

 2002年1月購入。4年10ヶ月の放置。シリーズの悼尾は第2次大戦後のローマを舞台に繰り広げられる。当時に生きるキャラクターたちはフィクション・ノンフィクション問わずに豊富で、今回主役級の活躍をするのはヘイミッシュ*1・ボンドだ。

 今回注目すべきなのは、ドラキュラ自身が非常に印象的な場面で殺害されてしまうことだ。そして物語は「ドラキュラ殺害事件」をめぐるフーダニットの要素を含みながら展開していく。

 当然、ドラキュラものとしてはつきものとも言える不死者=ドラキュラと死を避けられぬ者=人間という対比のドラマも取り込まれており、このドラマはシリーズ読者には感慨深いものがある。

 なお、これにてシリーズ完結と思いきや、作者は続編を執筆中だという。1970年代のハリウッドが舞台だと言う。作品の完成、そして翻訳が今から待ち遠しい。

*1:「ヘイミッシュ」はスコットランド読み。より一般的には「ジェームズ」と呼ばれる。