キム・ニューマン『ドラキュラ戦記』
- 作者: キムニューマン,Kim Newman,梶元靖子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1998/12
- メディア: 文庫
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怪作だ。なにしろドラキュラが支配するのはドイツ、しかもそのドイツの空軍が率いるのは戦闘機ではなく翼を生やした吸血鬼なのだ。そしてそれに対抗するイギリスの中枢には影の内閣としてあの「ディオゲネス・クラブ」が存在し、そのディオゲネス・クラブの密命によりエドガー・ポーが敵地へ赴いたりするし、さらにいえばそのポーは吸血鬼化していたりする。
そしてそのポーに代表されるようにこの時代の代表的な人物が実在・架空問わず大量に登場する*1。例えばそれはチョイ役に過ぎなかったりするが、それでも思わずニヤリとせずにいられない。巻末にそういった人物のリストが付いているのだがこれが壮観だ。歴史から小説・映画までジャンルを問わないで登場するキャラクターの数々……この手の知識が多ければ多いほど楽しめるに違いなく、思わず自分の知識の乏しさに地団駄を踏みそうになった。そういえば、本格ミステリ界隈で教養主義を打ち出した作家がいたが、教養主義をぶち上げるのなら本格に限定すると言うような了見の狭いことはせずに、もっと広範なジャンルにも適用してもいいじゃん。そう言いたくなるような、懐の広さを感じる作品だ。
*1:そしてそのほとんどが吸血鬼になっている!