山田風太郎『妖説太閤記』上下

妖説太閤記(上) (講談社文庫)

妖説太閤記(上) (講談社文庫)

妖説太閤記(下) (講談社文庫)

妖説太閤記(下) (講談社文庫)

 2冊まとめて。ともに2003年11月購入。3年の放置。風太郎版「太閤記」。妖説と冠していることから想像できるように、まっとうな秀吉物語ではない。といっても作者の名前から連想されるようないわゆる忍法ものでもない。妖説の妖説たるゆえんは天下取りに挑む秀吉の言動の裏にはすべからく女性が絡んでくることにある。成りあがりによる出世譚なのではあるが、出世=成功では決してなく、醜い猿顔ゆえに女性に疎んじられる男の悲劇の物語という趣が強い。忍法帖シリーズとは一味違う、山風なりに真っ向から挑んだ歴史ものと言う点で興味を引く作品だ。