伊坂幸太郎『砂漠』

砂漠

砂漠

 2005年12月購入。9ヶ月の放置。5人の大学生を中心に据えた青春小説。伊坂らしい洒脱な文体で大学生活が瑞々しく描かれている。タイトルの「砂漠」は大学卒業後に待ち受けている辛く厳しい無味乾燥な社会人生活の象徴として用いられているのだが、舞台となる大学生活を記した4つの章には彩りに満ちた四季のそれぞれ――春夏秋冬が用いられているのは明らかに社会人生活と大学生活を対比的に捕らえている。しかし、「砂漠に雪を降らせてみせよう」という登場人物の台詞に象徴されるように、彼らの社会人生活もそれなりに彩りに満ちたものになるのではないか。卒業直前まで描かれた最終章が「冬」である以上、その後には春が待ち受けているはずだ。
 余談だが、各章が春夏秋冬であり、登場人物の4人が東西南北であるからには春―東、夏―南、秋―西、冬―北という対応関係に基づいて登場人物にスポットを当てているのではないかと深読みしたが、そんなことはないようだ。
 さらに余談。本書を読んでいると、無性に麻雀やりたくなるよね。