有栖川有栖『乱鴉の島』

乱鴉の島

乱鴉の島

 展開を派手にしようと思えばいくらでも派手にできそうな要素を背景にすえておきながら、あくまで淡々と、本格ミステリとして話を進めていく。実に有栖川らしい作品だ。そしてそれとは逆に、本格ミステリとして王道とも言える孤島を舞台にしたクローズドサークルものとしてしておきながら、連続殺人やそれによる「次は自分が襲われるのでは?」という緊張感からは距離を置き、やはり淡々と物語を進めていく。これもまた有栖川らしいといえる。

 探偵役の捜査が殺人事件の謎を解く=「死」の理由を探ることにありながら、真相として逆ベクトルのものがあぶり出てくるところが特徴的。