ゼナ・ヘンダースン『ページをめくれば』

ページをめくれば (奇想コレクション)

ページをめくれば (奇想コレクション)

 本書は変り種の作品が多い「奇想コレクション」にしては結構普通のストーリーだ。大半の作品がが宇宙人と人間、大人と子どもの交流を描いているのだが、作品群から感じられるのは作者の優しさだ。そしてその優しさも「忘れられないこと」や「小委員会」単に心温まる物語を提供するのではなく、例えば「先生、知ってる?」のような大人の世界を子どもの視点で描いたやりきれない作品もある。ただ、後者は前者と表裏の関係にあるのであってやりきれなさとかあるいは苦さや切なさは、子どもに対する作者の優しいまなざしがあるからこそ描けるものだと思う。愛する女性を失いつつある男が愛を取り戻すために奮闘する「グランダー」は泣ける系の愛情物語が受ける今のご時勢にはえらく受けそうな気が。