山田正紀『風水火那子の冒険』

風水火那子の冒険 (カッパ・ブックス)

風水火那子の冒険 (カッパ・ブックス)

 2003年4月購入。3年4ヶ月の放置。新聞配達員の風水火那子を探偵役とした中編集。各作品ごとに事件の起きる場所に趣向を凝らしている。海の家で起きた被害者のはっきりしない殺人事件を扱った「サマータイム」、ラーメン横丁で起きた料理評論家殺しとそのダイイングメッセージをめぐる謎「麺とスープと殺人と」、爆弾の仕掛けられたバスで警部から聞いた別の事件を推理する「ハブ」、かつてのメリーセレスト号よろしく船員の消失した船上で事件の謎を解く「極東メリー」。これらの作品は事件そのものに巻き込まれるというより、事件の周辺に居合わせた火那子が事件を推理するという趣向をとっている。山田正紀といえばシリーズ探偵をいくつも抱えているが、こういった巻き込まれ型の探偵という点で風水火那子はその中でも最も使い勝手のよいキャラクターであるといえよう。