若竹七海『心のなかの冷たい何か』
- 作者: 若竹七海
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2005/12/17
- メディア: 文庫
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探偵役の女性が捜査の最中に出会った人々から聞かされる不の感情に振り回される、といった展開は後の「葉村晶シリーズ」の雛形であることは明らかであろう。のみならず、人間の心のなかに潜む冷たい何か――悪意とか狂気といったものを描くという意味では、本書の段階で作家若竹七海の作風は確立されているといってもよい。単行本刊行後絶版、入手困難となっていたこの初期の名作が、待望の文庫化で多くの読者の眼に留まることになったのは幸甚の至りである。次はぜひとも『水上音楽堂の冒険』を文庫化してほしいものだ。