E・R・エディスン『ウロボロス』

ウロボロス (創元推理文庫)

ウロボロス (創元推理文庫)

 入院中に読んだ本①。どうせベッドで安静にしているしかないのだから、長めの本を読んでやろうと思い、チャレンジ。購入日は不明。奥付を見ると1999年3月となっているから、前世紀末か、今世紀初頭に買ったものと思われる。

 水星を舞台に修羅国と魔女国の争いを描いた英雄叙事詩。一応善玉、というか主役国として扱われるのが修羅国で、ジャス王、吐火卿、ゴールドリイ・ブラスコの3兄弟が英雄として描かれ、敵国となる魔女国の側のゴライス大王と戦うこととなる。主役側は剣を扱う英雄で、敵は魔術を用いるという設定はいかにも古典的でが、古典が古典的なのは仕方あるまい。

 また、王=英雄というあり方は西洋ファンタジー、あるいは神話の常套的設定であるが、これは東洋的な王=君子という視点(『水滸伝』の宋工など)とは大きく異なる。文民統制という考え方は現代では比較的好ましいシステムであると思われるが、文学の世界においてこの思想は東洋のほうがはるかに進んでいたといえる。