筒井康隆『恐怖』

恐怖 (文春文庫)

恐怖 (文春文庫)

 2004年2月購入。1年半の放置。姥坂市に住む作家村田勘市は殺人事件の第一発見者になる。死体を見たことにから始まる恐怖は事件が連続殺人に発展することにより高まっていく。一連の事件を推理していくと、どうやら自分も犯人に狙われる可能性がある。かくして村田は半狂乱に陥っていく。

 ミステリとしてはフーダニットとハウダニットの色合いの濃い作品で、さすがにそつなくこなしていますね。お得意のメタ要素も満載。テーマとなっている「恐怖」に関する部分はやはりお得意のスラップスティック、ブラックユーモアを用いて描写しています。全盛期の勢いはないが、熟練の腕をふるって作り上げたという感じ。

 ここを読んでいる人はミステリ好きが多いと思うので注意を。作品内でクリスティ『そして誰もいなくなった』のトリックの肝になる部分をネタバレしてます。……いやでも、ミステリ好きなら『そして誰もいなくなった』のトリックは承知してるか。まあ、一応。