山田正紀『蜃気楼・13の殺人』
- 作者: 山田正紀
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2002/10
- メディア: 文庫
- クリック: 7回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
ミステリで事件が起きる場所として田舎がよく用いられるが、そこに都会から移住して来た人物を主人公に据えることにより、都会―田舎の対比を鮮やかにさせている。しかも時代を都会的価値観が崩壊する直前のバブル絶頂期とするあたり、舞台設定は申し分がない。
13人のランナーが消え去るところはまさに「蜃気楼」だが、この表題が示すところはもっと別にあるように思える。最終的に古文書通りに起きた事件の実行犯は明らかになるが、さらにその裏でうごめくさまざまな人物の意図の存在が現れる。それをふまえた場合、真犯人はいったい誰というべきか? この事件の背景を含めたもの――結局つかむことができなかった真相こそが「蜃気楼」なのであろう。