本格ミステリ05
本格ミステリ05 2005年本格短編ベスト・セレクション (講談社ノベルス)
- 作者: 本格ミステリ作家クラブ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/06/07
- メディア: 新書
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小林泰三「大きな森の地位さな密室」
問題編・回答編と2回に分けて雑誌掲載された作品。したがって問題編を読了後回答編の発表まで読者はいろいろと推理をめぐらすことができるわけだが、その間にいろいろとミスリードさせようという仕掛けが問題編の最後にある。これはこれで有効だろうが、今回の一挙掲載という形をとるとその効果は格段に落ちてしまう。掲載スタイルがトリックを選ぶということか。
山口雅也「黄昏時に鬼たちは」
ネット上で使われるハンドルネームで呼び合う人物が登場した時点である程度トリックが見えてしまった。このパターンは今では使い古されてしまった感が。ただ、そこからやはり使い古された感があるもうひとつのトリックを重ねたのはさすがにウマイ。
竹本健治「騒がしい密室」
漫画原作として考えられたからか、キャラクターがいかにもそれ風になっている。ただ、本格の骨格はしっかりとしていて好印象。犯人特定の決め手が従来の証拠固めをひっくり返した形、すなわち証拠がないからこそ犯人という構図になっていて面白い。
伯方雪日「覆面」
プロレス界を舞台にしたミステリ。ロジックもプロレス界特有のものを用いている。
柳広司「雲の南」
賢いものほど殺されてしまうという構図はミステリ的にいうと名探偵ほど被害者になりやすい、ということ。ただ、真の名探偵はそれさえも乗り越えていくもの。この構図自体は非常に面白かったが、いかんせん作品の完成度が頓知パズルの延長線上にすぎず、一小説として読んだ場合大きなマイナスとなってしまう。
三雲岳斗「二つの鍵」
2種類の鍵によって開閉できる箱をめぐる話。箱を開けることが容疑者にとってどういう意味を持つか、したがってその箱を開けうるのは誰かという論理展開はやや複雑に感じたがきっちりとロジックを転がしていっており好印象。設定した条件から推理を展開し、犯人を特定するという形がしっかりと出来上がっている。
柄刀一「光る棺の中の白骨」
密室状態をこれでもかと強調していくところがさいごに密室が崩れたときのカタルシスを大きなものとしている。ただ、大掛かりなトリックはややトンデモ系という気がしないでもない。
鳥飼否宇「敬虔過ぎた狂信者」
見立て殺人と思わせて実は……という話。そのための舞台づくりをきっちりとしているところが好印象。
高橋葉介「木乃伊の恋」
唯一の漫画作品。これはこれで楽しめたが、やはり他作品と比べると分が悪いかな。ただ、この手のアンソロジーに漫画が収録されるということが昨今の本格ミステリを取り巻く状況を象徴している。金田一少年、コナン以降、本格ミステリは活字だけでなく漫画でも読まれるものとして認識されている。ミステリ漫画は活字のミステリ読みから見てもそれなりの市民権をえられたということか。
とりあえず、順位付けに悩んでみるか。投票対象外の天城一「密室作法」は投票が済んでから触れることにする。