鮎川哲也『準急ながら』
準急ながら 鬼貫警部事件簿―鮎川哲也コレクション (光文社文庫)
- 作者: 鮎川哲也
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2001/08
- メディア: 文庫
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鬼貫警部によるアリバイ崩しものの佳作。特に容疑者のアリバイの堅固さをこれでもかといわんばかりに示していくところはすごい。鬼貫の仮設はことごとく砕かれていくわけだが、この積み重ねによって最後にアリバイが崩れたときのカタルシスが大きいものとなる。派手さにかけるがいぶし銀の1作といえよう。なお、事件関係者として登場する女性が、2人ともそれぞれ男性に負けぬほど気が強く、特殊な職業とはいえ自身で仕事をする人物として描かれている。作品が書かれた時代背景から考えるとその当時の女性の社会進出や地位向上といったものを積極的に取り入れた、いわば風俗小説の側面を備えているといってもよいのでは。