田中芳樹原案・荻野目悠樹著『野望円舞曲6』

野望円舞曲 (6) (徳間デュアル文庫)

野望円舞曲 (6) (徳間デュアル文庫)

 久々のシリーズ最新刊。母を殺した父へ復讐すべく動き出したエレオノーラは<宙峡>崩壊を阻止した英雄として祭り上げられることになる。それを是とせぬ父レオポルドは娘に向けて刺客を放つことを決意する。


 原案のみで参加の田中芳樹だが、このシリーズの雰囲気は昔の彼の作品――『銀河英雄伝説』や『タイタニア』といった宇宙を舞台にした架空歴史ものを髣髴とさせる。また、個人的には原案とは異なるがシェアードワールド化した作品や途中で他作家にバトンタッチした、田中本人が直接関わらぬ作品群の中では一番楽しめる。


 先に銀英伝を引き合いに出したが、本作の主人公エレオノーラ、ベアトリーチェのコンビはラインハルト&キルヒアイスを連想させる……などと思っていたら今巻ではあんなことに。ストーリーとしてはありだけど、もうちょっとアレンジしなきゃまずいだろうに。


 もう1点気になったのが、エレオノーラの兄ジェラルドの設定。初めのころは智将として登場したのに今では知性を有する人工物<思考体>に頼りきりになってしまってるのがなあ……


 とりあえず、「復讐譚」として展開される物語がここにきて復讐そのものに対する是非が問われ、エレオノーラの行動指針が揺らぎつつある。文豪デュマの『モンテ・クリスト伯』もこの手問いかけがあったが、復讐という負の感情を扱う以上この流れは必然であろう。