芦原すなお『ミミズクとオリーブ』

ミミズクとオリーブ (創元推理文庫)

ミミズクとオリーブ (創元推理文庫)

 2001年3月購入。結構最近購入したつもりが4年以上放置していたのか……


 八王子在住の作家「ぼく」のもとへ訪れる友人の刑事。その目的は妻の手料理と冴える推理。いわゆる「安楽椅子探偵」ものの短編7編。


 「安楽椅子探偵」ものと紹介したが、肝心の推理部分はややぬるい気がする。だが、「ぼく」と妻の仲睦まじい夫婦っぷりは読み心地がよい。相談に来た友人が事件の説明をする際に入れなくてもよい合いの手をしょっちゅう入れてくる語り手がうざいなと思っていると、きっちりたしなめてくれる奥様。このへんの呼吸が楽しい。


 また、そんな仲睦まじい夫婦と対照的に事件は男女間の愛情のもつれを扱ったものが多い。そのへんに起因する事件の真相を見抜いた妻が悲しそうな様子を見せたりする。


 ――この作者は物語の見せ方のツボを心得ている。短編の終わりには、ミミズクが必ず庭に姿を見せる。そのほのぼのとした姿が事件の真相を見抜いてやりきれない思いをしてる妻の気持ちを和らげてくれている。そうして「ぼく」も読者もほっとすることが出来る。


 なお、忘れてはならないのが作中に登場する讃岐名物の料理の数々。いずれも酒の肴にもってこいといわんばかりのものばかり。名探偵にして料理上手な奥様……語り手の「ぼく」がウラヤマシイ。