連城三紀彦『人間動物園』

人間動物園 (双葉文庫)

人間動物園 (双葉文庫)

 2005年11月購入。1年半の放置。都市機能が麻痺するほどの大雪の日に起きた誘拐事件。誘拐されたのは汚職疑惑の渦中にある大物政治家の孫娘。そして被害社宅には盗聴器がいたるところに仕掛けられており、警察は被害者との面会すらままならないのだった……
 盗聴器の存在によって被害者と警察を遮断したことにり、冒頭では「見えない被害者がどういう状態にあるか」という一風変わった推理劇が繰り広げられ、緊迫感高まる場面を演出する。そして中盤以降の「誘拐」という構造の大掛かりな変化には驚愕、そして感嘆。そもそも仕掛けが大きくなればなるほどそれを読者に隠蔽するのは難しくなるのだが、連城の筆をもってすればそれを巧妙に隠しつつもかくも精緻に作品を織り上げて見せるのだ。当代きっての技巧派ぶりは本書でもいかんなく発揮されている。すばらしい。

平山夢明『独白するユニバーサル横メルカトル』

独白するユニバーサル横メルカトル

独白するユニバーサル横メルカトル

 まるでおとぎ話のような語り口で残酷な話を展開する「C10H14N2(ニコチン)と少年」で幕を開け、以降人肉食を扱う「Ωの聖餐」、同級生によるいじめ、あるいは鬼畜な義父に虐げられる少女「無垢の祈り」、芸術から感動を得ることを奪われた世界を描くSF「オペラントの肖像」、死刑囚の心理分析をSF仕立てかつミステリ的趣向を濃厚に描いた「卵男」、グロ満載「すまじき熱帯」、地図による一人称というユニークな演出で殺人鬼の行動を描いた「独白するユニバーサル横メルカトル」、人を解体する男に迫る狂気「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」。以上8編。扱う素材が素材ゆえ読者を選ぶ短編集だが、1作1作がかなり濃密でよっぽどグロに対する免疫がない、というのではない限り一読の価値はある。

山口雅也『PLAY』

PLAY  プレイ

PLAY プレイ

 2004年9月購入。2年8ヶ月の放置。収録されている4つの短編はいずれも何らかの遊戯に絡んだストーリーとなっている。優れた外科医とその妻子による「ぬいのファミリー」はぬいぐるみ、「遊戯王」さながらの闇のゲームが展開する「蛇と梯子」ではボードゲーム、ネット仲間によるオフ会での事件をつづった「黄昏時に鬼たちは」では隠れ鬼、現代的若者を象徴するかのような少年が主人公の「ゲームの終わり/始まり」ではテレビゲームといった具合だ。そしてそういった遊びを材料に描いたいずれの作品も裏には家族問題というテーマを内に秘めている。夫婦の不仲、あるいは非行に走る少女、あるいは引きこもり問題……そして両者を絡めた物語に待ち受けているのは家族崩壊。題材の扱いからいって全うな落とし方で、かつ遊戯という要素をうまく絡めているのでそれなりに読めるのだが、もう一ひねり欲しかったところ。