アルフレッド・ベスター『分解された男』
- 作者: アルフレッド・ベスター,沼沢洽治
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1965/04/30
- メディア: 文庫
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作者がミステリ者であったのならば、ライクの犯行計画に力を入れたハウダニットとして作品を手がけていたかもしれない。しかしSF畑のベスターはその部分をあっさりと流し、以降のライクVSパウエルの駆け引きに筆を多く費やしている。その駆け引きも心理戦というには荒っぽい展開であり、繊細な展開を望む読み手にとっては辛い作品であるかもしれない。実際のところ読みどころとなっているのは追うパウエルの執念や追われるライクの焦燥、そして徐々に追い詰められていくライクの精神の行く末といった部分である。もちろん彼らの心情のあり方の根底にあるのはESPの持ち主が存在する世界という設定部分で、これを踏まえた上で繰り広げられる二人の物語を素直に楽しみたい。