辻村深月『ロードムービー』

ロードムービー

ロードムービー

 2008年10月購入。1年7ヶ月の放置。収録された3短編のタイトルはいずれも道あるいはその英単語ロードを含んでいる。またこれら短編の主要人物が子どもたちであることも共通している。「ロードムービー」は優等生でありながらいじめの対象となったトシちゃんが親友のワタルと家出する話、「道の先」塾講師のアルバイトをする大学生が出会った千晶という女子中学生の話、「雪の降る道」は病気で小学校を休んでいる少年と彼を見舞う少女の話。いずれのストーリーも紆余曲折を経ての少年少女の成長を描いており、タイトルに象徴される道(ロード)が彼らの成長の過程を示しているであろうこと想像に難くない。わかりやすい意図のもとで描かれている直球の短編で、いずれも良作であるが単なるサプライズに過ぎないミステリ的趣向が凝らされている作品があり、その点は鼻についた。