小峰元『アルキメデスは手を汚さない』

アルキメデスは手を汚さない (講談社文庫)

アルキメデスは手を汚さない (講談社文庫)

 2006年9月購入。2年11ヶ月の放置。女子高生の柴本美雪が亡くなった。死因は中絶手術の失敗で、彼女を妊娠させた相手は不明のままだ。復讐を誓った父親の健次郎は美雪の友人たちに探りを入れる。そんな中、美雪のクラスメイトが毒殺未遂に逢う……
 基本的人間関係は大人VS子どもという構図に収まる。そして分別のついた大人に対して少年少女たちは怖いもの知らずで、はっきり言って大人をなめきっている。そのありさまはいかにもゆとりっぽいのだが、本書が発表されたのは1970年代で、彼らをゆとりという言葉でくくるわけにはいかない。強いて言えば、彼らのような言動のあり方は時代を問わないものであるということなのだろう。ただ一方で、彼らの言動には情熱がある。解説でアウトロー的な彼らに対する意見が好意的なものであるのは、それが伴っているからであろう。作品の結末が甘っちょろいガキが挫折するというものになっておらず未来志向である点も考慮されたのかもしれない。