湊かなえ『贖罪』

贖罪 (ミステリ・フロンティア)

贖罪 (ミステリ・フロンティア)

 2009年6月購入。2ヶ月の放置。とある田舎町で一人の少女が殺された。事件発生直前まで被害者と遊んでいた友人たちは、犯人らしき人物を目撃していた。にもかかわらず、具体的な風貌を証言できなかったため、犯人は捕まることがなかった。被害者の母親は、目撃者であった四人の少女に言う。「わたしたちはあんたたちを絶対に許さない」「私が納得できるような償いをしなさい」――と。今後、この呪詛のような言葉に縛られていくことになった少女たちの生き様を描いた作品。
 少女たちが大人になってから後に起きた出来事を、短編に近い形で彼女たちそれぞれの視点で語り、張り巡らせた伏線を最後で綺麗にまとめ上げる、という構図は作者が発表した前2作と同様だ。本書自体は各章に読み応えがあり、ラストも上手くまとまっているし、また作者特有の黒さを含んだ作風でもあるので十分に楽しめるのだが、前2作を踏まえた上で意地悪に見ると、同工異曲といった感があるのを否めない。これがはたして、単純に作者の手数が少ないからなのか、それともこの作風そのものを売りとしたいがための戦略なのか、今のところは判断できない。個人的にはもっと違うものも読んでみたいところである。