貫井徳郎『ミハスの落日』

ミハスの落日

ミハスの落日

 2007年2月購入。2年半の放置。短編5編。表題作はスペインのミハスを舞台にしており、ジュアン青年の死んだ母と商売で財成した老人に関する、密室殺人がらみの逸話が語られる。続く「ストックホルムの埋み火」ではストックホルムで起きたストーカーがらみの殺人事件を手がけた刑事を、「サンフランシスコの深い闇」では保険金殺人疑惑のある女とその身辺事情を探る男たちを、「ジャカルタの黎明」ではある娼婦の別れた夫が殺された事件を、「カイロの残照」ではツアーコンダクターが客から持ちかけられた恋人探しの手伝いの顛末を、というように、海外を舞台にしたミステリというてーまでもって描いている。舞台とした場所もそうだが、趣向もまた密室殺人あり、警察小説あり、といった具合にバラエティに富んでおり、一口にミステリといいながらも作者の守備範囲の広さを示している。