北村薫『玻璃の天』

玻璃の天

玻璃の天

 2007年4月購入。2年3ヶ月の放置。大戦前の昭和、上流社会を舞台とした「ベッキーさん」シリーズの第二弾。密室からの絵画消失の謎や暗号解読などといった趣向があり、純ミステリ的側面から見ても十分に堪能できる短編集だが、最大の読みどころはなんといっても時代の空気を紡ぎだす北村の美麗な筆致にある。ミステリ的趣向から生じた動機や背景といったものも、この時代描写に寄与しており、作品としての完成度の高い一作。