辻村深月『名前探しの放課後』上下

名前探しの放課後(上)

名前探しの放課後(上)

名前探しの放課後(下)

名前探しの放課後(下)

 上下まとめて。2007年12月購入。1年7ヶ月の放置。依田いつかはイケメンだが人付き合いに関しては冷めたところのある高校生だ。彼の同級生が、ある冬の日に自殺を遂げる。それが誰だったのか、なぜ死んだのか――記憶が曖昧なまま、気づくといつかは3ヶ月前にタイムスリップしていた。その誰だかも思い出せない同級生を救うため、彼は仲間を集めることにした。
 SF的ガジェットを根底に据えているのは明らかだが、あえてミステリ脳的解釈をするならば、本書は「犯人探し」ならぬ「被害者探し」という形式のフーダニットであるといえよう。そしてその過程で仲間たちに生まれる友情あるいは愛情が本書最大の読みどころだ。全体的にきわめてご都合主義的でありラストのミステリ的演出などは構成面からは蛇足に思えないでもないが、青春小説としてはまずまずの佳作である。