有栖川有栖『壁抜け男の謎』

壁抜け男の謎

壁抜け男の謎

 2008年5月購入。1年2ヶ月の放置。有栖川有栖のノンシリーズ短編集で、収録された作品群を見るとごった煮のイメージがある。とはいえ、冒頭に「読者への挑戦」つきのガチ本格ものを配置し、ラストに向かうにつれミステリ色の薄い作品を持ってくるという、既存ファンに優しい構成になっている。そのミステリ作品もパロディやパスティーシュありと多彩で、非ミステリにはホラーやSF、果ては官能小説(!)とバラエティに富んでいる。元来、本格ミステリというジャンル内にあってもさまざまな色合いの作風を展開してきた作者であるが、本書では枠外においてもそのような器用さを見せており、なかなかに楽しませてくれる一冊。