飛鳥部勝則『冬のスフィンクス』

 2001年8月購入。7年10ヶ月の放置。「冬のスフィンクス」と題された、洋館が描かれた絵の中に入り込む、という夢を見た男がその夢の中で殺人事件に巻き込まれ、その挙句自身が探偵となり事件解決に乗り出す、といった話。夢の中での出来事は現実で起こったこと――友人の失踪事件とリンクしており、夜な夜な見る夢は夢ならではの不条理さを見せつつも進行して行き、やがて現実との境が曖昧になっていく。夢を舞台とした幻想譚という部分をベースとしつつ、本格ミステリ的色合いを農耕にしたストーリーは読み手の足元を揺さぶる。その不安定さを楽しめるかどうかで評価の分かれそうな作品。