2007年2月購入。2年4ヶ月の放置。『海の底』スピンアウトの表題作と「有能な彼女」、『空の中』の後日談「ファイター
パイロットの君」など短編6作を収録。いずれも作者我欲舞台として用いる
自衛隊もので、かつ作者の得意とするベタ甘恋愛話である。この「ベタ甘」という言葉は
有川浩の作風をあらわすキーワードとしてしばしば用いられているのだが、本書においてそれを際立たせているのは背景にある「
自衛隊」というもうひとつのキーワードだ。我々一般的な読者にとって国防の任を担う
自衛隊のイメージというのは恋愛という概念はもっとも遠いところに位置するストイックな存在であるように思われる。そのような、甘さとは縁の薄いように見える世界を舞台にしているからこそ、読者の目には作者の描く恋愛話はよりいっそうベタベタ甘々にうつる。恋愛としての話の切り口のパターンは結構似通っているものの、このギャップによる
インパクトで飽きることなく読むことができる。一編一編の長さも甘さで
胃もたれを起こすことないようコンパクトにまとめられている