谷川流『学校を出よう!3 The Laughing Bootleg』

学校を出よう!〈3〉The Laughing Bootleg (電撃文庫)

学校を出よう!〈3〉The Laughing Bootleg (電撃文庫)

 超能力者たちが集う学園を舞台にしたシリーズの第三弾。冒頭ではルームメイトが密室から消え去る事件の顛末が語らえる。光明寺茉衣子はそ事件解明に乗り出すが、れをきっかけに判明する、コピー人間大量発生騒動。自分が脳内に思い描いた人物が脳内に思い描いた都合のいい人格で実体化するという。茉衣子は本来の自分とはまったく違う性格の自分が学園内に跋扈するのを目撃する。それだけでも気色悪いのに、性格までそっくりそのままコピーした自分まで現れるのだった……
 この現象に内包するテーマは言うまでもなく、自分自身の客観化・相対化であり、登場人物はよいところ嫌なところをありのまま見せ付つけられることにより内省の念を抱くことになるであろうと予想される。しかし、本書においてはあくまでこの現象はストーリーを展開していく上での燃料であるにとどまり、テーマを掘り下げていく方向へには進まない。とはいえガジェットとして用いられた本書のストーリーはキャラクター小説としての面白みを有しており、その方面では十分に楽しめる作品だ。