道尾秀介『鬼の跫音』

鬼の跫音

鬼の跫音

 2009年1月購入。3ヶ月の放置。道尾秀介初の短編集。これまで作者が発表してきた長編の特徴は、大胆な仕掛けを施しつつじっくりとストーリーを進めていき、最後に仕掛けを発動し、読者に提示してきた作品世界の構図を劇的に変化してみせる、というものだ。本書に収録されているのは短編であり、ストーリーそのものは短くなっている。しかしそれでいて大胆なトリックは健在。したがって長編で見られる特徴を濃縮、あるいは先鋭化させたりしたものであるといえよう。必然、各短編とも読者の目にはより切れ味の鋭いものに移る。作品構築のテクニックはすばらしいものであり、それいながら小手先の技に頼り切っているわけでもない誠実な作品作りとなっており、好印象だ。