桜庭一樹『ファミリーポートレイト』
- 作者: 桜庭一樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/11/21
- メディア: 単行本
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本書ではそのような作者のテーマ的欠落を埋めんとするかのように、母と娘の関係がメインに据えられている。第一部では少女コマコと母マコのこと、まさに「少女」というものが「母親」との関係性でもって述べられていく。残酷で悲しく、しかしどこか美しいその物語は母親の退場でもって幕を閉じる。続く第二部はコマコが少女から大人へと成長していく話だ。年を重ね、年齢的に第一部の母親のそれに追いつき追い越し、やがては自分が「母」になる――それは成長とともに自身の少女性の喪失であり、母親というくびきからの開放でもある。ここまで書ききって、作者による「少女」と「母親」の物語は完成するのだ。出来そのものも期待にそぐわぬすばらしいもので、作者にとっても読者にとっても非常に意義深い一冊だ。