竹本健治『キララ、またも探偵す。』

キララ、またも探偵す。

キララ、またも探偵す。

 2008年5月購入。7ヶ月の放置。美少女メイドロボット・キララを探偵役に据えた一作目と異なり、本書収録の三編におけるキララの役どころは異なっている。「キララ、失踪す。」では海水浴に来た一行とはぐれたキララがとった奇妙な行動の謎を探るといった体裁で、明らかに探偵役ではない。続く「光瑠、探偵す。」ではタイトルが示すように別人物が探偵役を務め、キララはその助手の役割にある。最後の「キララ、赤面す。」にいたってはキララ自身の出番はほとんどなく、脇役の周辺事情にまつわる出来事がエロ満載で述べられていく。
 ミステリ濃度もさほど高いとは言えず、ミステリ作家としての竹本作品を期待していたとしたらそれは肩透かしに終わるに違いない。もっともそれは、前作読了済みであれば想定の範囲内であろう。では、本書のもうひとつの側面、すなわち美少女キャラクター小説としてはどうか。これまた前作からは予想可能の範囲であったが、一世代古いおっさん向けのテイストで、現代的ラノベの洗練さとはほど遠い。
 以上、ジャンル読み的視点で鑑みるとミステリ・ラノベ両読者にとってもすっきりした読後感を得づらい作品であるといえる。作者自身は本書を楽しんで書いたであろうと想像できるが、そのこと自体がファンのニーズをまったく満たしていないわけで、その意味で読者・作者双方にとって不幸な作品といえる。