貴志祐介『クリムゾンの迷宮』

 1999年4月購入。9年7ヶ月の放置。藤木芳彦は知らぬ間に危険なゲームに巻き込まれていた。岩山に囲まれた見知らぬ地、与えられた荷物の中にあった携帯用ゲーム機、同じように知らぬ間にゲームに巻き込まれた男女たち……彼らは命がけでゴールを目指さねばならない。
 典型的な巻き込まれ型デス・ゲームで、用意された舞台や設定もいかにもゲーム的だ。ゲームに参加している面々はそれぞれ自分が選んだルートにしたがって行動するのだが、作中で用意された視点はあくまで藤木と彼と行動を共にする大友藍に固定されており、物語が散漫になることはなく、ボリュームのわりには冗長さを感じさせぬテンポでスムーズに読み進めていくことが出来る。そのテンポのよさゆえラストはあっけなく感じるくらいにあっさりと展開されるので、その点は物足りないのだが、吸引力の強い作品で楽しく読める。