マイクル・ムアコック『永遠の戦士エルリック2 この世の彼方の海』
この世の彼方の海―永遠の戦士エルリック〈2〉 (ハヤカワ文庫SF)
- 作者: マイクル・ムアコック,井辻朱美
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/05/01
- メディア: 文庫
- 購入: 4人 クリック: 34回
- この商品を含むブログ (57件) を見る
続く『<夢見る都>』は三本の短編仕立てで、いずれも魔剣ストームブリンガーとともに活きていかざるをえないエルリックの悲劇の物語となっている。その一作目、「<夢見る都>」で宿敵イイルクーンとの決着及び最愛の恋人サイモリルとの間に訪れた最悪の結末が描かれ、以降「神々の笑うとき」「歌う城砦」の二編ではエルリックの言動に、その結末がもたらした影響が色濃く見て取れるようになっている。自虐的にして虚無的、決して明るいとは言いがたいエルリックの性格がここにきて決定的に洗練強調され、そしてその快活とは一切無縁の陰鬱さが本シリーズにおけるなんともいえない魅力となっている。
本書一冊のボリュームはかなりのものだが各エピソードそのものは短く、非常に読みやすい。ダークヒーロー・エルリックの魅力、そしてムアコック宇宙を堪能できるという意味で、シリーズの中でもお得な一冊といえる。
*1:残念ながら、魔都ロポンギルスで魔術師イスルギーとともに活躍した老騎士は登場しない。