スタンリイ・エリン『特別料理』

特別料理 (異色作家短篇集)

特別料理 (異色作家短篇集)

 2006年7月購入。2年2ヶ月の放置。収録された短編には起伏にとんだプロットやそこから導き出される捻りの聞いたオチが用意されているので、いわゆる広義のミステリを好む読み手は安心して楽しむことの出来る作品集だ。有名な表題作はオチを知らない読者にとっても容易に推測可能である。しかし、そのオチにたどり着くまでの展開及び演出、特に真相を直截的に描写しないことによって緊張感を高めていく、その筆致の妙にこそ味わいがある。単に展開を楽しむのみで、すべてわかりやすく書かれたものを読みやすいといってありがたがる、ゆとりっぽい読み方を常々しているようなタイプの読み手には、本作の真髄を堪能することは出来ないかもしれない。作者の書いたことを追っていき、あるいは書かなかったことを想像し、そうやって丁寧に読んでいくと味わいは増していくであろう。