澤見彰『燃えるサバンナ』

燃えるサバンナ (ミステリーYA!)

燃えるサバンナ (ミステリーYA!)

 2008年2月購入。7ヶ月の放置。雨がまったく降らず、渇きに苦しむサバンナの地。伝説では、雨を降らすには太陽の化身である赤いたてがみのライオンを倒さねばならないという。夢で未来を知ることの出来る少女・シバは自身の夢見に従い、伝説のライオンを探すたびに出るのだった。
 近年では珍しい、アフリカの未開の地を舞台にした小説ではあるが、そのような舞台設定が目を引くのみで全体の印象は薄い。未来視の能力によって周囲に疎まれているシバが旅の中で理解者を得ていくという構成、そしてその理解者が同年代の男性という恋愛対象者であること、そしてもう一人が老人という人生の先達であること、この二点によってシバの人格形成に与える影響が多角的になるであろうことは明確である。しかしその設定の掘り下げは甘く、きちんと落としどころを設けているにもかかわらず消化しきった感がさほどない。舞台設定や人物配置が魅力的であるだけに、この消化不良は非常にもったいない。作者の筆力向上を望む。