樋口有介『船宿たき川捕物暦』
- 作者: 樋口有介
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2004/10/08
- メディア: 単行本
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作者初の時代物ではあるが、基本的には現代ものと似た特徴を備えているといってっよい。すなわち、主人公はモテる、というものだ。倩一郎は米造の娘・お葉だけでなく、佐伯道場の娘・綾乃(ツンデレ!)にも好意を抱かれる。他にも周囲の女性はおしなべて彼に好意的であり、彼女らの示す愛情・好意を洒落た会話でかわしてみせる。これぞ舞台こそ違えどまさしく樋口作品。ただ一点異なるのは、それらの女性との決着のつけ方で、自由恋愛の許された現代ではなく江戸時代を舞台にしたがゆえの結末が本書には待ち受けている。とはいえ主人公と美女たちとのやり取りは作者の持ち味が遺憾なく発揮されており、初時代物とはいえ期待を裏切らない出来だ。時代物が苦手であっても樋口ファンなら読んで損はない作品だ。