倉阪鬼一郎『ブランク 空白に棲むもの』

ブランク―空白に棲むもの (ミステリーYA!)

ブランク―空白に棲むもの (ミステリーYA!)

 2007年12月購入。8ヶ月の放置。突然体が揺れだし、髪の毛が真っ白に変化し、そして頭が爆発する――という奇妙な死に方をする者が次々と現れる。生物の死の「兆し」や「余韻」を否応なく目にしてしまう特殊能力の持ち主・井筒志門はこの現象の解明に乗り出す。
 提示された事件・現象はホラーの文脈で解決され、ストーリーの締めもきちんとしている。それゆえホラーというジャンルにありがちな読後の不安定さ・モヤモヤ感というものはなく、わりあい落ち着いた心持で巻を閉じることが出来る。逆にいえば、ホラーとして読むと大いなる肩透かしを食うことになる。
 作者の持ち味ともいえる偏執的で粘着質な登場人物もさほど登場せず、物語は比較的おとなしめな調子で進み、ゆえに作者のファンであれば薄味という印象も受ける。
 以上の瑕疵が生じたのはおそらく本書がヤングアダルトレーベルで発表されたからであろう。スプラッターなシーン、マッドな登場人物など、作者らしい要素が配置されているものの、それらを特化させ悪趣味な色合いを濃くせず、あくまでマイルドな方向へと作品をシフトさせてしまったのはもったいない。