折原一『タイムカプセル』

タイムカプセル (ミステリーYA!)

タイムカプセル (ミステリーYA!)

 2007年3月購入。1年3ヶ月の放置。中学卒業を記念してタイムカプセルを埋めた八人の生徒たち。開封を予定していた十年後、メンバーの一人であった石原綾香のもとに奇妙な手紙が届く。切手も貼られてない奇妙な手紙を不審に思った彼女は他のメンバーに接触をはかる。徐々に明らかになっていく彼女の知らなかった当事の事情――不登校の生徒やいじめ問題、微妙な人間関係。十年の時を経て明らかになる事実、そして手紙の書き手とは……
 タイムカプセルに関わった面々が大人になった現在がメインで描かれ、そこに当事の回想が挿入されるという形式で進んでいく。二十代の彼女らが振り返る過去は、単純に懐かしむものたりえず若さから生じる無邪気な過ちが絡んでくる。青春時代の甘酸っぱさ・ほろ苦さとは無縁で、さらに、それを懐古する現在の姿によって生じる時の流れ・重みを感じさせるという類の作品ではない。あくまで興味は過去に何があったか、という一点に集中されており、ストーリーはサスペンス風味で粛々と展開されていく。過去に焦点があてられているのだが青春小説的ではないので、それらを期待すると肩透かしになりかねない。とはいえ、この作者らしい仕掛けもあり、持ち味は十分に発揮できている作品ではあろう。